Something for Structural Engineering

建築土木の構造工学と,その周辺

菊竹清訓巡礼

菊竹清訓巡礼

菊竹清訓巡礼

この書籍の出版記念イベントに行ってきた。菊竹清訓氏と言えばモダニズムや「か・かた・かたち」など関連する単語は山のように出てくるし、作品や構想は誰もが知っている。私はスカイハウスが好きだ。とはいえまだ現物は見たことがない。個人宅に見学に行くのはすこし気が引けるからだ。しかし学部3年の設計製図の課題で外観だけであるが少し参考にさせていただいたことがある。若気の至り。


菊竹氏の作品・人物像を知るには素晴らしい機会だった。施工担当企業等が映像として残していた3作品は、当時の技術や情勢、思想などが詰め込まれていた。博覧会などのテンポラリーな建築も多いが、アクアポリスの映像は圧巻だった。時代背景として現代では不可能だろう。


印象に残ったのは事務所OBらによって語られた菊竹氏の教育・指導方法である。各所員で異なる手法をとっていた。初期の遠藤氏とは一緒に現地調査に出かけ、階段などを実測し、数十年後の内藤氏には3時間程度でコンペ案を30案作れという無理難題を突き付けていた。個性を見抜いていたのだろう。


長谷川氏によって語られた菊竹氏と篠原一男氏との逸話や、遠藤氏の高田馬場駅前広場に描いた実寸図面の話、仙田氏による独立後からあのコンペの話など、書きだしたら止まらないので割愛する。


著者の磯氏らによれば、菊竹氏のルーツである久留米市をはじめ多くの地方に作品を残しているが、氏の作品には水への畏怖が表れているらしい。幼少期から河川の氾濫などに脅かされたためか、水の怖さを十分理解していたようだ。


逝去から1年、菊竹氏が何を考えいかに作ったかを知るには、この書籍を参考に現地へ足を運びたい。構造家の松井源吾氏の作風とともに体験してみたい。