菊竹清訓巡礼
- 作者: 磯達雄,日経アーキテクチュア,宮沢洋
- 出版社/メーカー: 日経BP社
- 発売日: 2012/12/13
- メディア: 単行本
- この商品を含むブログを見る
菊竹氏の作品・人物像を知るには素晴らしい機会だった。施工担当企業等が映像として残していた3作品は、当時の技術や情勢、思想などが詰め込まれていた。博覧会などのテンポラリーな建築も多いが、アクアポリスの映像は圧巻だった。時代背景として現代では不可能だろう。
印象に残ったのは事務所OBらによって語られた菊竹氏の教育・指導方法である。各所員で異なる手法をとっていた。初期の遠藤氏とは一緒に現地調査に出かけ、階段などを実測し、数十年後の内藤氏には3時間程度でコンペ案を30案作れという無理難題を突き付けていた。個性を見抜いていたのだろう。
長谷川氏によって語られた菊竹氏と篠原一男氏との逸話や、遠藤氏の高田馬場駅前広場に描いた実寸図面の話、仙田氏による独立後からあのコンペの話など、書きだしたら止まらないので割愛する。
著者の磯氏らによれば、菊竹氏のルーツである久留米市をはじめ多くの地方に作品を残しているが、氏の作品には水への畏怖が表れているらしい。幼少期から河川の氾濫などに脅かされたためか、水の怖さを十分理解していたようだ。
逝去から1年、菊竹氏が何を考えいかに作ったかを知るには、この書籍を参考に現地へ足を運びたい。構造家の松井源吾氏の作風とともに体験してみたい。