Something for Structural Engineering

建築土木の構造工学と,その周辺

引き続き、Archi-TV2010について書き残す。
http://architv2010.nobody.jp/


当日は批評系の方々がRealTimeReview!!を書いてくれていたのでこちらもぜひ。
Live!!構造解析を見守ってくれた村瀬君、ありがとう。


またしても長文注意。


当日は早朝に集合し、テンションが無駄に高い構造班メンズと共に準備。
開始直前に銀茶会メンバーも続々と到着。
オープニングでは村上Dによる企画説明、その後、曲げ試験・引張試験と並行して解析。
日付が変わってからは深夜帯でそれらの考察・説明、夜が明けてから女性班の立ち上げを見守り、銀茶会との講評会に参加、最後は統括ディスカッションという流れ。


私は主に実験をやっており、治具の組み立て、計測器の調整など、どう考えてもATVに参加してる女子たちには出来ないようなことをしており、みんなに不思議がられた。
レーザー変位計の不具合を直せなかったのは私の未熟さゆえです。ごめんなさい。
準備中や実験中に見に来てくれる批評系の村瀬君の爽やかさに癒されていたのは内緒である。
また実験中もいろんな人が見に来て、なんだかよくわからないけどワクワクする!と言ってくれたのが印象に残った。
これは私でいえば、イトカワの砂の話のようなもので、宇宙のことなんて全然わからないけど、なんか凄い!みたいな。違うか。


しかしこの例えが本当だったら怖いな。
構造が宇宙のようで、身近に感じられないようなら建築学生としては失格だと思う。
安全性も確保できない設計士が、快適を作り出せるだろうか。
現在の世の中では当たり前すぎて見失っていないだろうか。
構造ははっきり言って難しい。私も今でも解らない事が多い。
しかし解らないものを解らないまま放置するのは完全なる怠惰である。


解析も少し見ていたが、もう少しあれをやるべき、これをやるべきと言った方が良かったのかな、と反省している。
実験ばかりやっていたけど、普段は解析ばかり勉強しているので各種解析の意味というか重要性は解っているつもり。スキルは別にして。
しかしやらない意向なら逆らうつもりもなかったし、PCのスペックの問題もあるので何とも言えない。
でも優秀な解析組が相当頑張ってくれたので、一定の成果はあげられたと思う。
あんなモデル作るのはかなり骨の折れる作業だし、動かすのでも一苦労。


構造解析というのは汎用ソフトが普及してきて、それっぽく誰でも触れる範囲にまで来ている。
しかし触れるだけでは単なるCADオペのようなもので、設計をしているわけではない。
これが勘違いを招いている。触れればいいというものではない。
我々が考えるべきところは、解析対象をいかに正確に捉えて力をモデル化し、出てきた解析結果の妥当性をいかに判断するのか、というところに尽きる。
コンピュータが「もしかして」を判断できる能力を持たない限り、人間が入力した通りにしか動かないのだから、解析結果を鵜呑みにするのは間違っている。
入力に問題があるかもしれない。
もはや私にとってはごく自然なことなのだが、解析の前と後の重要性は常に気にしておかねばならない。


そういった意味で、深夜帯のUstは価値のあるものだったと思う。
実験や解析の結果を一般視聴者に伝えるということ、これは我々構造学生にとっても良い勉強であった。
解っているはずのことをいざ話そうとすると説明できないものである。
相手が構造系であればある程度の理解はしてもらえるかもしれないが、非構造系であったので、平易な説明が求められる。
こういった機会でもない限り説明などしないので、またとない場だったのかもしれない。
やはり図や模型などで示すのが伝わりやすい。
模型は実際に力をかけて動かせて見せた。実挙動ほどわかりやすいものはない。
また、配信班より伝えられたのが、深夜の放送にもかかわらず、構造系の配信時には安定した視聴数を保ち、視聴者からは面白いとの声を多く賜った。
話していたのはほぼ村上Dで、私は相槌を打ちながら若干喋る程度であったが、好評だったという知らせはとてもありがたい。


本来ならばここで数時間休憩のはずだったが、女性班がついに展開にかかるということで立ち会うことになった。
展開の直前に施工計画が全然なってないことを知ったためである。
本来なら施工には口を挟まないつもりだったのだが。
結果として、なんとか立ちそうだったが3時間以上格闘の末、講評会後に崩壊してしまった。
理由は個人的観測だが、施工計画の不備、我々が指摘していた箇所の設計不足。
しかし我々にも落ち度はある。
長辺方向のアーチは引張でもつはずだったが、全く効いていなかった。
崩壊の原因はもっとほかにもあるが、割愛する。知りたい方がいれば番外編で説明するかもしれないが。
やはり1/1となると相当な検討が必要なことが身に染みてわかる。
この設計に関しては今月末に再度展示する機会があるので、それまでに修正を加えねばならない。


統括ディスカッションでも話題はLive!!構造解析で持ちきりだった。
ただ珍しかっただけではなく、ちゃんとした成果を残せたからであろう。
もちろんまだ議論が足りない点もあるが、配信を意識したコンテンツとしては良かったのではないだろうか。
足りない部分はこれから補完できるだろう。


これも村上Dの文字通りディレクションのおかげだと思っている。
もちろん他のメンバーである滝内D、染谷・松田・宮崎・荒川の各氏、日大で作業を手伝ってくれた会計担当の工藤君のサポート体制も強力だったが、村上Dの行動力・発想力・話術は頼れる存在であったに違いない。
私は結果的に技術協力のような形であったが、自分がM1の時に同じことをやれと言われても出来なかったのではないかとおもう。
自ら考え、実行するということがいかに大事か、思いを形にするためには何が足りなくて誰の協力が必要か、客観的に理解できていたのであろう。
もともと村上Dの考え方は全面的に賛成であったが、それ以上の何かを持っていそうな気がする。
私の中で株は上がっている。信じてついてきて良かったと思う。


周囲のスタッフからは総じて「構造班は変人」だとか「濃い」だとか言われ続けた。
おそらく偶然なのだが、面白いメンバーが集まってしまったのである。
男性陣はみんな細く華奢で、しかしそれさえも「構造的に最適な設計をしている」などと構造系ギャグで笑いに変えてしまう。
心が座屈しそう!とか言ってしまうのである。
そんな内輪ネタも滑稽に映ったのだろう。


ここで、果たして構造学生に何が可能か、と問う。
それは、内に籠らず表に出ること。
そうすることで、我々も鍛えられ、他分野からの理解が得られる。
自らを理解し、他者を理解すること。
目的は良い建築をつくることではなく、さらにその向こう側にある「人」であることは間違いないわけだから、作る側の人間同士が理解できていなけれは全くの無意味。
自らに専門分野があることは前提だが、それだけではいけないのである。


ここで集まったメンバーは一生モノののような気がしている。
近いうちに機会を作って何かやりたいものである。
まずは力学系ラジオの続編を撮ることかな。